秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「あ、あの」
足がもつれて、倒れそうになったコルネリアは目をつぶる。
と、二の腕のあたりを引っ張られ、よろけた体が逆回転した。
何が起こったのわからぬまま、目を開けたときには彼女は違う男性の腕の中にいた。
「あ、こら」
「お前のステップはペアダンスには向かないよ。レディを転ばせてどうする」
コルネリアを抱きとめているのは、最初に踊った男性だ。ペアを奪われた形になる、ダークブルーのジャケットの男性は、口元に笑みをたたえたまま踊りの輪から抜け出てくる。
「おやおや。人のお相手を奪うとは情熱的だね。運命のきらめきを感じたかい?」
「馬鹿を言うな。お前に振りまわされているのを見てられなかっただけだ。……大丈夫ですか?」
「あ、はい」
優しく問いかけられ、温かみのあるブラウンの瞳に、コルネリアの胸は高鳴った。
彼は気遣うように彼女に視線を送り、すっとしゃがむと、「失礼」とコルネリアの足に手を添えた。
「きゃっ」
「少し擦りむいていますよ。ダンスは休憩したほうがいい」
そんなことは……と思ったが、彼のウィンクに休むための口実をくれたのだと気づく。
「そうですね。素敵なダンスをありがとうございました」
確かにこう言えば角を立てずにダンスを終えることもできる。
気の利いた対応に、コルネリアはほっとした。