秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
クラウスは、疑念のまなざしを浮かべたまま、コルネリアの手を取る。
「お嬢さんはこちらへ。お話を聞かせていただきたい」
仕方なく彼についていこうとコルネリアが一歩踏み出すと、腰のあたりを傍に立っていた男性に押さえられた。
「俺も行くよ。お前は威圧的すぎる」
仮面で顔は見えないが、こちらを気遣ってくれる態度にコルネリアの胸は大きく波打つ。
先ほどから助けてくれるこの男性は、いったい誰なんだろう。
第二王子であるクラウス様をお前と呼べるほど親しいのなら、よっぽどの地位のある人間なのか。
「いいだろう。一緒に来い」
クラウスがにやりと笑って、手招きをする。
男性は、小さく頷くとコルネリアを促し、小声で耳打ちした。
「知っていることはすべて話したほうが身のためですよ。クラウスは君のことを疑っているようだ」
ぞっとするような内容におびえて身をすくめると、彼は腰に添えた手に力を込めた。
「でも俺には、君が悪事を働くような人間には見えないけれどね」
「え……」
その一言に、コルネリアは救われたような気持ちになった。
最後にクラウスはヴィリーにも視線を送る。
「お前も一緒に来い。今のところ一番状況を把握しているようだし」
「はっ」
ヴィリーはきびきびとした返事をして頭を垂れた。
そして、まだ音楽の鳴り響く広間を出て、促されるままエントランスにある二階への階段を上った。