秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
4.疑念と思惑
*
導かれた部屋は招待客用の寝室の一室だった。
天蓋のあるベッドと、座ってくつろぐための椅子とテーブル。壁の大部分を占める大きな絵画には、現王の戴冠式の時の様子が描かれていた。
「さて。せっかくの仮面舞踏会だったが、事情が変わった。申し訳ないが自己紹介からお願いできるかな。私はクラウス=ファーレンハイト。いわずもがな、ドルテア国の第二王子であり、この屋敷の主人だ」
仮面を外すと、確かにエリーゼのものとよく似た緑色の瞳がよく見える。
コルネリアはあまり王宮主催の晩餐会には出席しないし、いても末席にいることが多いので、第二王子を間近で見るのは初めてだが、すっと通った鼻筋やくっきり二重の目といい、全体的に派手な顔は、王家筋の特徴だ
「で、こっちは友人のギュンター=ベルンシュタイン」
王子に言われて、ギュンターが仮面を外す。
現れたのはブラウンの髪にブラウンの瞳、落ち着いた印象の理知的な美丈夫だ。クラウスと比べてしまえば華はないが、コルネリアの目はくぎ付けになった。
この方が、ギュンター様。
自分を含めた多くの令嬢が、結婚を望む家柄に生まれた男性。
こんなに魅力的ならば、政略結婚というだけでなく、本気で求婚したいと思っている女性がたくさんいるだろう。
コルネリアは、自分も縁談相手の一人に入っていることが急に恥ずかしくなってきた。
父が勝手に送っているとはいえ、いったいどんな肖像画が贈られたのか、本物を見てがっかりされないだろうかと、見当違いな不安が首をもたげる。
導かれた部屋は招待客用の寝室の一室だった。
天蓋のあるベッドと、座ってくつろぐための椅子とテーブル。壁の大部分を占める大きな絵画には、現王の戴冠式の時の様子が描かれていた。
「さて。せっかくの仮面舞踏会だったが、事情が変わった。申し訳ないが自己紹介からお願いできるかな。私はクラウス=ファーレンハイト。いわずもがな、ドルテア国の第二王子であり、この屋敷の主人だ」
仮面を外すと、確かにエリーゼのものとよく似た緑色の瞳がよく見える。
コルネリアはあまり王宮主催の晩餐会には出席しないし、いても末席にいることが多いので、第二王子を間近で見るのは初めてだが、すっと通った鼻筋やくっきり二重の目といい、全体的に派手な顔は、王家筋の特徴だ
「で、こっちは友人のギュンター=ベルンシュタイン」
王子に言われて、ギュンターが仮面を外す。
現れたのはブラウンの髪にブラウンの瞳、落ち着いた印象の理知的な美丈夫だ。クラウスと比べてしまえば華はないが、コルネリアの目はくぎ付けになった。
この方が、ギュンター様。
自分を含めた多くの令嬢が、結婚を望む家柄に生まれた男性。
こんなに魅力的ならば、政略結婚というだけでなく、本気で求婚したいと思っている女性がたくさんいるだろう。
コルネリアは、自分も縁談相手の一人に入っていることが急に恥ずかしくなってきた。
父が勝手に送っているとはいえ、いったいどんな肖像画が贈られたのか、本物を見てがっかりされないだろうかと、見当違いな不安が首をもたげる。