秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

しかし、エリーゼがさらわれたのが本当ならば、何としても探し出してもらわなければならない。服装の情報は手掛かりになるはずだ。


「……エリーゼは自由を求めていたんですわ」

「自由とは?」

「公爵令嬢としてではなく、ひとりの女性として参加したかったのだと思います。私たちは従姉妹同士で気心も知れてますから、衣装を交換することで変装したつもりになっていたんです」


結局、コルネリアはエリーゼとヴィリーの関係を公にするのはやめた。
変なイメージがついてしまってはふたりは無理矢理別れさせられるかもしれない。


「ですから、私。エリーゼが何を着ていたかわかります。濃い紫と黒のシンプルなドレスで、胸元に花飾りをつけいたはずです」

「ええ。そんな色合いのドレスでした。一緒にいた紳士は、黒地のジャケットにズボンと目立たない服装で、仮面をつけていたため、顔は全く分かりませんでしたが、髪も黒っぽかったと思います」


答えたのはヴィリーだ。
彼がようやく口を開いたことで、コルネリアはふたりの関係を隠した自分の判断が正しかったのだ感じて続けた。


「それに、私とエリーゼは一緒の馬車で来たんです。私に一言もなく、おいて帰るなんてことがあるはずがありませんわ」


クラウスはコルネリアとヴィリーを見比べた後、隣にいるギュンターに向き直った。


「なるほど。……どう思う、ギュンター」

「まあ、そこまでおっしゃるならさらわれたのは本当なんだろう。だとすればこれはこれで問題だ。バルテル公爵の大事なお嬢さんだろう。早く捜索の手を伸ばしたほうがいい」


クラウスのほうはまだ納得しかねる様子だ。

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