秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「それに先ほどのダンス。一度は俺の誘いを断ったのに、逃げた男女の話を聞いたとたんに、まるで逃げる時間を稼ぐかのように踊ろうと言ってきた。ほら、おかしいとは思わないか? あんなおとなしそうな顔をしているやつこそ怪しいというものだ。実は彼女が計画した犯罪だといわれても俺は納得がいくね」
確かに、彼女は最初からあまりダンスには乗り気ではなかった。
自分と踊った時も途中で終わりになってしまったし、自分から誘うというのはよっぽどの動機がなければないだろう。
「お前を気に入ったんじゃないのか」
「まさか。惚れられてるというよりは怯えられてる気がしたけどね」
「だったらなんで誘ったんだ」
ギュンターが呆れて言うと、クラウスはにやりと笑う。
「お前が踊った女性だからだよ。品定めしようと思ってさ。数人と踊ったのを見ていたが、彼女との時が一番楽しそうだったじゃないか」
目ざとい男だ。
自由に踊りまくっているのかと思っていたが、案外周りには目がいっているらしい。
「では仮に彼女がやったとしたならば目的はなんだ」
彼女を疑うことに抵抗はあったが、まずは意見を聞いてみようとひとまずその意見を受け入れると、クラウスは楽しそうに話に乗ってきた。