秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「あ、探しましたよー。ギュンター様!」
廊下の端から早歩きでルッツがやってくる。
「……って、どうしました?」
「何がだ」
「だってそんな不機嫌そうな顔。……ああっ、もしかして、護衛のくせにギュンター様を見失っていたから怒ってらっしゃるんですか?」
慌てふためく従者を前に、ギュンターはため息をついて顔の筋肉を整えた。
「怒ってない。ルッツのことなどなんとも思っていないよ。それより黄色のドレスを着た女性を見なかったか」
「それはそれでショックなんですけどー」
ルッツが情けない顔をしつつ、「先ほど廊下でそんな感じの女性を見ましたが、騎士服の男性と一緒に外へ出ていきましたよ」と言われ、ますます眉間にしわが寄る。
自分でもわかっている。こんな感情的になるなど、ありえないことだ。
騎士服の男ということは、相手はヴィリーか。
悪い見方をすれば、二人が結託してという考えも浮かばないわけではない。
ならば黒幕は本当にコルネリアなのか。
「……探しに行く」
ギュンターは首を振って歩き出した。ルッツが慌てて後を追う。
「どうなさったんですか、ギュンター様」
「ルッツ、頼みがあるんだ。さっき言ったような女性を探してほしい。今は仮面を外しているはずだ。見つけたら、声をかけるより先に俺を呼びに来てほしい」
彼女が潔白であるという直感を、どうしても自分自身で証明したかった。