秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
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「待ってください。ヴィリー様」
コルネリアは、部屋を出てすぐ、前を行く騎士を呼び止めた。
彼は数歩行き過ぎた後立ち止まり、一瞬の躊躇を見せた後、作法に従い一礼をした。
「……ベレ伯爵令嬢、コルネリア様ですね。はじめまして」
「はじめまして。あの、私のこと、エリーゼから聞いていませんか? 彼女とは従姉妹同士で、今日の……その、駆け落ちのことも相談を受けておりましたの」
“駆け落ち”の言葉にヴィリーの体がびくついた。
「どういうことなのです? わたくしはあなたとエリーゼが駆け落ちするのだと聞いておりましたのに」
「しっ……、そのことはご内密に。ことが公になれば、私たちの関係は破たんしてしまいます。……薔薇園のほうへ行きませんか?」
確かに、屋敷の中では誰の耳が聞いているか分かったものではない。
頷いて、コルネリアは彼について歩き出す。
舞踏会は、コルネリアたちのような騒ぎに気付いた一部の人間を除いて、そのまま続けられているようだ。薔薇園にも、新たに出来上がったカップルが軒並みふたりきりになれる場所を探してさ迷い歩いている。
「ここも人が多いですね」
「そうね。……そうだわ、馬車のほうに行きましょうか」
夕方から始まった宴は、深夜から明け方まで続くのが通例だし、先程、クラウス王子も招待客を返さないようにと言っていたはずだ。ということは馬房のほうならば人は少ないだろう。
「待ってください。ヴィリー様」
コルネリアは、部屋を出てすぐ、前を行く騎士を呼び止めた。
彼は数歩行き過ぎた後立ち止まり、一瞬の躊躇を見せた後、作法に従い一礼をした。
「……ベレ伯爵令嬢、コルネリア様ですね。はじめまして」
「はじめまして。あの、私のこと、エリーゼから聞いていませんか? 彼女とは従姉妹同士で、今日の……その、駆け落ちのことも相談を受けておりましたの」
“駆け落ち”の言葉にヴィリーの体がびくついた。
「どういうことなのです? わたくしはあなたとエリーゼが駆け落ちするのだと聞いておりましたのに」
「しっ……、そのことはご内密に。ことが公になれば、私たちの関係は破たんしてしまいます。……薔薇園のほうへ行きませんか?」
確かに、屋敷の中では誰の耳が聞いているか分かったものではない。
頷いて、コルネリアは彼について歩き出す。
舞踏会は、コルネリアたちのような騒ぎに気付いた一部の人間を除いて、そのまま続けられているようだ。薔薇園にも、新たに出来上がったカップルが軒並みふたりきりになれる場所を探してさ迷い歩いている。
「ここも人が多いですね」
「そうね。……そうだわ、馬車のほうに行きましょうか」
夕方から始まった宴は、深夜から明け方まで続くのが通例だし、先程、クラウス王子も招待客を返さないようにと言っていたはずだ。ということは馬房のほうならば人は少ないだろう。