秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

「だといいわね。ちょっとは気が抜けるわ」


ほっとしたように笑うエミーリアを見て、満足したギュンターはトマスに目を向ける。


「エミーリアを頼むぞ」

「はっ」


信頼できる幼馴染でもあるトマスが、姿勢を正したのを見て自然に口元を緩めたギュンターはそのまま立ち上がった。


「数日留守にする。クラウス殿下がお呼びなのでな」

「まあ、王子殿下が。お兄様も大変ね。行ってらっしゃい」


溺愛する妹にだけ真実を告げ、ギュンターは彼女の目元のほくろめがけてキスを落とす。
親愛の情を表すキスを、ギュンターはいつごろからかここにするのが癖になっていた。


「お気をつけて」

「ああ」


妹に笑顔を見せてから、トマスに伝言を頼みつつ部屋を出る。


「父上と母上には、お忍びで外出すると伝えてくれ」

「はっ」

「ルッツ、お前は護衛としてついてこい。さ、さっさと行って来よう」


着替えなどの荷物を取るために自室に向かい、ルッツにすべて持たせて執務室前を通り過ぎたとき、「ちょっとあなた、見てちょうだいこのご令嬢」と声高に叫ぶ母親の声が聞こえた。

大方、いい縁談相手を見つけたのだろう。細かい話をもってこられる前に逃げてしまおうとギュンターは階段を駆け下りた。

朝から準備させていた馬に乗り込み、ギュンターとルッツは一路中央領へと馬を走らせた。


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