秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
できる限り物音を立てないようにして、ルッツが言っていたあたりまで来た。
コルネリアが来ている服は目立つ。二人を見つけるのは案外簡単だったが、何を話しているのかが気になる。
ギュンターは茂みの高いところから回り込むようにして、ヴィリーの背後に回った。
そして聞こえてきた話に目を見張る。
「エリーゼは世間知らずのお嬢様よ。恋に溺れている今は特に、周りなど見えていないわ」
コルネリアは心配そうに目を伏せる。
「そのようですね。今日、本気で逃げる気だった彼女と対面して初めて、僕はそれに気づきました。僕は落ち着くよう諭したんです。当然ですが彼女はひどく傷ついて、僕のもとを去っていったんです。そうしたら……」
続くヴィリーの話を聞きながら、ギュンターは脳内の疑問符にひとつひとつ答えを想像していく。
エリーゼはヴィリーと逃げる気だった。
しかし、それが反故となり、自暴自棄になったところで別の男にさらわれた。
コルネリアはそれを後押ししていただけということか。
ホッとしつつ、もう少し詳しい話をと耳を凝らしているとき、ヴィリーが振り向き、隠れるのが一瞬遅れたギュンターはふたりに見つかった。
「ギュ、ギュンター様。どうしてこんなところに」
「それを言うなら君たちもだろう。ヴィリー、君は捜索隊に入るんじゃないのかい?」
「そ、そうです。失礼しますっ」
ヴィリーは頭を下げると、ギュンターの脇をすり抜けるようにして立ち去った。
残されたコルネリアは、まずい場面を見られたと思っているのか、目をそらしたままだ。