秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
やはり、嘘をついているようには見えない。
エリーゼの話をしながら昔を思い出したのか、今まで見せたことのないような自然な微笑みをみせ、すぐに今の状況を思い出して、眉根をよせ、心細げにつぶやく。
「……エリーゼ。何事もなければいいけど」
彼女は白だ。直感を信じよう。
心の中でギュンターは誓う。
状況証拠がいくらコルネリアが犯人だと裏付けていても、彼女に公女誘拐などという大それたことができるとは思えない。
「エリーゼ嬢を見つけるために力を尽くします。明け方までには絶対に見つけましょう」
ギュンターが力を込めてそういうと、コルネリアはすがるようなまなざしを向けてきた。
「ありがとうございます。ギュンター様。よろしくお願いいたします」
髪が乱れるのもかまわずに、必死に頭を下げるコルネリアを見ていると、何とかしてやりたいという衝動が湧き上がってくる。
どうしたことなんだろう。
いつも落ち着いて、利になる行動をとるよう努めていたはずなのに。
今はただ、目の前の少女を笑わせたいとだけ思っている。
そのためになら、いかなるものを利用しても構わないと思っていることにも、ギュンターは自分で驚いていた。