秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
5.閉じ込められる令嬢
ギュンターがコルネリアを伴いながら屋敷に戻ると、広間の入り口では騒ぎが起こっていた。
壮年の男性とクラウスが、押し問答をしているのだ。
声高々にまくしたてる男性をみて、ギュンターは息を飲んだ。
あれは、エリーゼの父親であるバルテル公爵だ。
「叔父様、落ち着いてください」
「これが落ち着けるものか。エリーゼに何かあればわかってるだろうな! クラウス」
クラウスは、今は仮面を外した状態で、広間に入って行こうとするバルテル公爵を止めている。
周りの従者たちはどちらの味方をすればいいのかわからず、ただオロオロとしている。
クラウスの慌て顔は珍しいので、ギュンターは思わず見入ってしまった。
流石の第二王子も、叔父が相手となれば粗相はできないと思うのだろうか。
「とにかく別室で話しましょう。まだ舞踏会は続いています」
「こんな事件が起きているのに、宴を続行するなどおかしいだろう」
公爵は、クラウスにつかみかからんばかりの勢いだ。
「公爵様?」
背中からコルネリアが問いかけると、公爵は鬼のような形相で振り向いた。そして掴み掛らんばかりの勢いでコルネリアの肩を揺さぶる。
「お前はコルネリアっ、これはどういうことなんだ」
「落ち着いてくださいませ。公爵様」