秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
コルネリアの母は姉に会うという体で、コルネリアは同年の公爵令嬢と交流を深めるという体で集まれば、すべてうまくいくはず、という考えだったのだろうが、あろうことかその屋敷の主人の不興を買ってしまったという結果だ。
「大体、なぜエリーゼのドレスをお前が着ているのだ!」
机をこぶしでたたかれて、コルネリアは身をすくめる。
「落ち着いてください。公爵様」
時々ギュンターが止めに入ってくれるも、娘の結婚相手(と公爵は思い込んでいる)にかばわれるなど図々しいとばかりに、公爵の怒りは増すばかりだ。
「ドレスのことは、その、エリーゼの提案なんです」
「はん。どうだかな。大方、純真なエリーゼを言いくるめたんだろう。大事に育てすぎたせいか、あの子は少し世間知らずなところがあるしな」
エリーゼが世間知らずについては同意する。
そもそもエリーゼが駆け落ちなんて思い詰めなければ起こらなかった事件だ。
「本当なんです。その……、公爵様は最近、エリーゼに縁談を強要なさったでしょう? ……それで」
とたん、公爵は飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「なっ、娘はこの縁談を喜んでいるに決まっているだろう。何を言い出すんだ。ぎゅ、ギュンター殿、この小娘のいうことなど気にしないでください」
そして慌ててギュンターに弁明をし始める。こらえきれなくなったクラウスが横を向いて肩をゆすっているのが見えた。