秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
公爵のほうは、ようやく落ち着きを取り戻し、クラウスの声にも耳を傾け始めた。
「エリーゼの捜索は始めておりますのでご心配なく。宴を続行するのはむしろエリーゼのためですよ。年頃の令嬢がさらわれたとなって騒ぎ立てられては評判に傷がつくでしょう。それより、どうして叔父上はこちらへ? まだ伝令が届くには早すぎると思いますが」
「今日の宴が仮面舞踏会だと聞いていたからな。エリーゼが馬鹿なことをしないように見張りをつけていたんだ」
「え?」
それにはコルネリアも驚く。
どこから? いつから? 馬車にはふたりだけで乗ってきたし、つけられていたなんて思わなかったのに。
「それは驚いた。でしたら、叔父上のつけた見張りは、犯人の姿を見たのですか?」
「それが……途中見失ったらしいんだな。探している途中に、騎士団の連中の噂話でさらわれたことを聞きつけたらしい。私は今日は国王と会談で王城にいたのでな、そこに見張りが報告にきて、慌ててやってきたというわけだ」
「では、父上にも?」
「ああ。兄上はお怒りだぞ。仮面舞踏会なんぞ社交とは言わん、遊びの場だ。クラウスはそんなものばかりやって人に迷惑をかけると」
「……それはまた面倒なことをなさってくれました。早々にエリーゼを見つけないと。父上から大目玉を食らってしまう」
クラウスは顔に手を当てて、神に祈るように天を仰いだ。俳優めいたその仕草を、公爵はにらみつける。