秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「とにかく、エリーゼに何かあったらお前のせいだからな」
「はいはい。わかってますよ」
「だったら早く娘をみつけんか! 嫁入り前の大事な体なんだぞ」
クラウスは辟易したように肩をすくめる。と同時に、ノックの音がした。
「失礼します」
騎士団の制服を着たガタイのいい男が入ってくる。
「報告します。バルテル公爵家の馬車から宝石が出てきました。御者が発見し保管していたそうです」
その男が手のひらに持っているのは、小さな袋だ。中を開けると金や銀、紅玉やラピスラズリなどのきらびやかな宝石が出てきた。
「あ、それはエリーゼの」
と、ポロリと漏らしたと同時に、公爵が汚いものを見るような目でコルネリアを睨んだ。
「なぜおまえが知っている。さては……宝石まで盗んだのか?」
「違います!」
「いや、やはりお前が怪しい。クラウス。コルネリアには動機もある。彼女を調べてくれないか」
「叔父様、落ち着いてください」
クラウスは手のかかるペットをなだめるように叔父の肩を撫でつけてから、ちらりとコルネリアを見た。
「君は、これがエリーゼのものだと知っていたんだね」
コルネリアは無言で頷く。
馬車から出てきたということは、きっと降りるときにドレスの隠しから落ちてしまったのだろう。