秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「宝石は身に着けるものだ。こんな袋に隠すように持っているのはおかしいと思わないか」
「それは……」
コルネリアは口ごもる。
駆け落ちのことを公爵にばれてはいけない。けれど事実は伝えなければ混乱を招くだけだ。
「持っていくように、……私が言ったんです。その、せっかくの仮面舞踏会ですし、途中で気分を変えるのもいいんじゃないかと思って」
「ふうん」
クラウスからの値踏みするような視線が刺さる。ギュンターは黙ったまま全員の顔を見比べていた。疑念に満ちた空気を作り出した原因が自分だと思うと、コルネリアは身をすくめることしかできない。
最終的に決定権があるのはこの屋敷ではクラウスだ。彼はポンと一つ手のひらをうち、みんなの注目を自分のほうへと集めた。
「……コルネリア嬢、あなたにはこれから用意する一室にこもってもらおう。エリーゼが見つかるまで、あなたはそこから出られない。その間、思い出したことがあればなんでも言ってくれ。エリーゼが見つかれば君への嫌疑も晴れる」
「クラウス!」
ギュンターが立ち上がる。クラウスは焦るギュンターをからかうようにふっと笑った。
「叔父様じゃないけれど、コルネリア嬢が何かを隠しているのは明白だよ。お嬢さんは割と素直なたちらしい。時折目が泳ぐタイミングがあるんだが、そういう時は歯切れが悪い。君は大事なことを隠しているだろう」
「そうだ。早くエリーゼの居場所を吐け」
立ち上がる公爵をクラウスがなだめる。
「叔父様は少し黙っていてください」
「黙っていられるか。コルネリア、お前、エリーゼを陥れようとしているだろう。ベレ伯爵は野心家だ。一代で伯爵に成り上がっただけじゃ飽き足らず、ベルンシュタイン家とつながりを持ち、立場を盤石なものにしようとしている。そこでお前を送り込んだんだ」
「落ち着いて、叔父様」
もはやクラウスの制止も意味をなさないほど興奮している。
コルネリアはいたたまれなさに目をつぶった。
疑われているのも黙っているのもつらい。
一体どうするのがエリーゼの為になるのか全く分からない。