秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「……私が探し出しましょう」
低い声で、静かに言ったのはギュンターだ。その落ち着いた声音に、クラウスもバルテル公爵も口をつぐんで彼に注目する。
俯いていたコルネリアも、顔を上げずにはいられなかった。
決して華やかなわけではない、しかし確かな自信が感じられる彼の声が、人心を引き付ける。
伯爵家よりも格上の家柄はたくさんある。
それでも誰もが、娘の夫にと彼を願うのは、やはり彼自身が持つ魅力のためなのだ。
「私がエリーゼ嬢を探し出します」
きっぱり言い切ったギュンターに、公爵は感激しかり、という様子だ。
「おお、おお。さすがギュンター殿だ」
喜ぶ公爵に、「では話を聞かせてください」とギュンターが近づく。そして視線をクラウスに向け、「彼女は別室に」と短く告げた。
それが自分に向けられた言葉だと気づいて、コルネリアはショックを受けた。
ギュンター様にも疑われた。
悪事を働くようには見えないと、確かにそういってくれたのに。
突然つき離され、全身が凍り付いたような気がする。
「クラウス。部屋を準備してくれ」
「あ、ああ。行きましょうか、コルネリア嬢」
「……はい」
もはや顔を上げる余裕はなかった。
公爵の鼻で笑うような声を耳にとらえたけれど、ムッとする元気さえない。
ギュンターに疑われたことが、それほどまでにつらかったのだ。