秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
クラウスは無表情のまま、彼女に値踏みするような視線を向ける。
「今は望まなくても、会えば変わるだろう。ギュンターに求婚されて断れる女などいるかな」
いわれてみれば確かにそんな気もした。
エリーゼはヴィリーに恋をしていたとはいえ、彼の気持ちは駆け落ちに応じられない程度なのだ。
ギュンターとちゃんと話してみれば、彼のほうがよっぽど素敵な男性だと気づくのではないだろうか。
「……そうですね」
恋なんて一過性のものだ。将来を考えればエリーゼにはやはりギュンターが似合っている。
なのに、もうそれを素直に喜べなくなってしまった。
なんてことだ。よりによって、してはならない相手に恋をしてしまうとは。
「少し一人にしていただいてもいいですか?」
穴があったら入りたい気持ちで、コルネリアはドレスを握りしめる。
「……扉の前に一人見張りをつけます。なにか思い出した話でもあれば彼に言いつけてください」
「はい」
窓辺に立ち薔薇園を見下ろす。
二階にあるこの部屋からは、迷路のような構造になっている薔薇園がよく見える。
そこここで恋を語らうふたり組が羨ましく思えたが、じきに視界がうるんで見えなくなってしまった。