秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「ふうん。重さ的には結構ありそうだったけどね。……ではエリーゼ嬢失踪は、ただの駆け落ち騒ぎだということで処理すればいいのかな?」
「いいえ。駆け落ちは失敗しているんです。実はその、お相手は騎士団のウィリー様なんです。正確には、ウィリー様は駆け落ちまでする気はなかった。でもエリーゼはするものだと思い込んでいて、ふたりは今日言い合いになったそうです。悲しんだエリーゼが逃げたところで別の第三者にさらわれたそうですわ」
「……ということは、さらった人間の目的はエリーゼとは限らないということかな? ただ貴族の令嬢をさらってどうにかしようという類のものだとしたら、非常に状況は厄介だが」
確かに。
まだ身代金騒ぎになったほうがまだましだ。その場合は、当座のエリーゼの安全は保障される。
しかし誰でもいいとなると目的はお金ではなく女性本人だ。安全でいる確率は一気に下がる。
「……エリーゼ」
不安からこぼした声に、ギュンターの手が反応した。
急に視界が開け、彼の手はコルネリアの肩と背中に回る。優しく横から抱きしめられ、背中を優しく撫でられた。
「そんなに不安にならないで。エリーゼ嬢は見つけ出します。俺にすべてお任せください」
「っつ、はい。ありがとうございます。お願いしますギュンター様」
涙をぬぐいながらそう答えれば、目元に温かい何かが触れた。
それが彼の唇だと気づいて、驚きのあまりコルネリアは体を震わせた。