秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「なっ……」
「ああ、失礼。あまりに泣くものだからつい。妹がいましてね、ここにほくろがあるものだから、あの子へのキスはここにするのが癖なのです」
でも私、あなたの妹さんではありません。
そう思ったが言葉には出せなかった。
ただ真っ赤になりおろおろするばかりのコルネリアを、ギュンターは目を細めて見つめ、今度は距離をとって、彼女の手にキスをした。
「あなたの不安はすべて解消してあげましょう。ここで待っていてください」
胸が高鳴る。
彼に任せてしまえば安心な気がした。
両肩に乗っていた重い責任と不安が、軽くなったのを実感する。
「あの、ギュンター様」
「あなたは動かないほうがいい。これ以上公爵に侮辱されるとこちらも我慢しきれなくなりますからね」
意味深な言葉を残して、彼は出て行ってしまった。
エリーゼが大変な時なのに、こんなにも彼に心を奪われている自分が、情け知らずのようで苦しかったが、それ以上に高鳴る動悸が全身を支配していた。