秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「ギュンター殿、どうだね。やはりコルネリアが怪しいのだろう? 全く、同じ年だというので懇意にしてやっていたというのに、エリーゼに手を出すとは人として失格だ。恩をあだで返すとはこのことだよ」
「まあ落ち着いてください。それより、公爵様はなぜそんなにコルネリア嬢を疑うのです? エリーゼ嬢と彼女は仲が良かったのでしょう?」
「それがよくないというんだ。エリーゼには最高の教育を施してきた。なのに最近反抗的なのはコルネリアの影響に決まっている」
「反抗的ですか。……ところでバルテル公爵、お願いがあります。今日、エリーゼ嬢は人生で一番恐ろしい目に遭って精神的にも苦しんでいるでしょう。私は彼女に心の平穏を与えて差し上げたいのです。どうか、彼女を救いだしたものに結婚の権利を与えてはくれませんか?」
「もちろんだとも! ただ婚約するよりもドラマチックだ。手前みそだがエリーゼは美しく品も学もある。あなたの妻となればきっとベルンシュタイン家を盛り立てていけるだろう」
「ありがとうございます」
ギュンターは深々と頭を下げ、クラウスの方を向いた。
「聞いていたよな。貴殿が証人だ。クラウス王子殿下」
「ああ。この耳にちゃんと焼き付けた」
「では使いの者たちが戻るのを待ちましょう。大丈夫、エリーゼ嬢は無事ですよ」
にっこりと微笑むギュンターに笑顔を向け、「ちょっと失礼するよ」とバルテル公爵が席を外す。
「どういうつもりなんだ? ギュンター」
いなくなったのと同時にクラウスが耳打ちすると、ギュンターは彼をじっと見て、そして笑った。