秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「本当に仮面舞踏会で運命が決まったようだ」
「え?」
「あれこれ手を尽くさなくてはならなくなったが、とりあえず感謝はしておくよ、クラウス」
「何のことだよ、ギュンター」
ギュンターはそれには答えず、話を切り替えるように、冷静な声を出した。
「それより、捜索についてだ。ヴィリーを含めて騎士団から数人貸してほしい。それから、できるだけ速い馬。バルテル公爵家の付添人たちにも話を聞きたいんだが」
「ああ、いいよ。すべて俺が許可を出しているといえばいい。一筆書いてやろう」
クラウスはそのまま執務室に向かい、『ギュンター=ベルンシュタインに捜索の権限を与える。彼の言葉を第二王子クラウスの言葉と思って聞くこと』という内容の書面をすらすらと書き、丁寧にサインを入れてギュンターに渡した。
「すまんな。ついでにその便箋と封ろうも貸してもらえるか?」
「いいよ。お前ならば俺の信用を落とすような真似はしないだろうからな」
「助かるよ」
こういう時は、クラウスから寄せられる絶対的な信頼も便利なものだ。
「お前は、バルテル公爵をなだめておいてくれ」
「嫌な役目だな」
「でもお前にしかできんよ」
苦虫を噛み潰しような顔のクラウスに笑みを返して、ギュンターは次に、厩舎へ向かった。