秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
たくさんの馬車がひしめき合い、馬が興奮するからか御者たちはおちおち休んでもいられなさそうだ。
「こちらがエリーゼ嬢とコルネリア嬢をのせてきた公爵家の馬車だね」
「はい。……すみません、どちらのお方でしょうか」
怪訝そうな顔を隠そうともせず、御者がギュンターを眺める。
「失礼。私はギュンター=ベルンシュタイン。今エリーゼ嬢の行方を追っているところなんだ。話を聞かせてほしい」
「ベルンシュタイン様? こんな臭いところにっ、すみません。場所を替えましょうか」
「いや、いい。気を使わないでくれ。それより聞きたいのだが、エリーゼ嬢の宝石が入っていた袋が落ちていたというのはどこかな?」
「えっ……、えっと、その」
御者はしどろもどろになって、ポケットの辺りをまさぐると思い立ったように箱馬車の方へ案内した。
「こっちです。エリーゼお嬢様は進行方向に対して正面に向かって座っていまして。落ちていたのはこの辺りで」
御者が指し示したのは対面の席の足元付近だ。
「なるほど。ところで、公爵は最近何かを建てていると聞いたんだが、あれはなんだろうね」
「ああ。物見台のことですか? 領地境の森の手前ですよ。森を見下ろすくらい高い建物にするみたいだって聞きましたけどねぇ」
「それは随分豪華だね。さすがは公爵様だ」
「ええ。それはもう」
へこへこする御者にコインを渡す。戸惑ったようだが、「取っておきたまえ」と言えば素直に受け取った。
「ところで、公爵様の乗ってきた馬車はどれかな」
「へ? あ、ええと。確か……あれ、いませんね」
馬車がぎゅうぎゅうに集められているこの場所で、確かに指し示された方向にはやたら余裕があった。
「……出て行ったのか?」
ギュンターは口元を押さえて考え込んだ。
「こちらがエリーゼ嬢とコルネリア嬢をのせてきた公爵家の馬車だね」
「はい。……すみません、どちらのお方でしょうか」
怪訝そうな顔を隠そうともせず、御者がギュンターを眺める。
「失礼。私はギュンター=ベルンシュタイン。今エリーゼ嬢の行方を追っているところなんだ。話を聞かせてほしい」
「ベルンシュタイン様? こんな臭いところにっ、すみません。場所を替えましょうか」
「いや、いい。気を使わないでくれ。それより聞きたいのだが、エリーゼ嬢の宝石が入っていた袋が落ちていたというのはどこかな?」
「えっ……、えっと、その」
御者はしどろもどろになって、ポケットの辺りをまさぐると思い立ったように箱馬車の方へ案内した。
「こっちです。エリーゼお嬢様は進行方向に対して正面に向かって座っていまして。落ちていたのはこの辺りで」
御者が指し示したのは対面の席の足元付近だ。
「なるほど。ところで、公爵は最近何かを建てていると聞いたんだが、あれはなんだろうね」
「ああ。物見台のことですか? 領地境の森の手前ですよ。森を見下ろすくらい高い建物にするみたいだって聞きましたけどねぇ」
「それは随分豪華だね。さすがは公爵様だ」
「ええ。それはもう」
へこへこする御者にコインを渡す。戸惑ったようだが、「取っておきたまえ」と言えば素直に受け取った。
「ところで、公爵様の乗ってきた馬車はどれかな」
「へ? あ、ええと。確か……あれ、いませんね」
馬車がぎゅうぎゅうに集められているこの場所で、確かに指し示された方向にはやたら余裕があった。
「……出て行ったのか?」
ギュンターは口元を押さえて考え込んだ。