秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


厩舎で話を聞き終えたギュンターは次に騎士団の詰め所へと向かった。

団長に話を聞けば、今はこの屋敷から十キロ圏内で該当の馬車がないかくまなく探しているという。
現在までに馬車が盗まれたと訴えている貴族はいないようだ。

失踪からの時間で考えれば、もう少し移動は可能だ。
範囲を広げて引き続き続行するように言い、とりあえずヴィリーだけを騎士団より借り受ける。
人気のないところまで連れて来られて、ヴィリーは不信感丸出しでギュンターを見つめた。


「ベルンシュタイン様。私に何を」

「悪いようにはしないよ。ただ、正直に話してもらわないと力にはなれない」

「ベレ伯爵令嬢が話したんですか?」

「名もなき娘からの告発なら聞いた。君とエリーゼ嬢は恋仲だったとね。俺はそれには反対しない。君たちの恋が成就するかは正直わからないが、このままだとエリーゼは名も知らぬ男に汚されてしまうかもしれない」

「そんなのっ……」


焦りを見せたヴィリーを、ギュンターは満足げに見つめた。


「いい顔だ。君が本気ならば俺も力になれると思う。さあ、正確な情報を教えてくれ。特に、男がエリーゼ嬢を担いだ時の持ち方を。例えば荷物を抱えるように担いでいたのか、丁重に扱っていたのか。エリーゼ嬢と認識してさらったのかそうでないのかで、探す範囲はずいぶん変わってくる」

「……それは」


ヴィリーは記憶をたどるように遠くを見たかと思うと、おずおずと「……横抱きに、しっかりと抱えられていました。確かに、逃げることを思えば動きにくい抱き方です」と告げる。

< 73 / 147 >

この作品をシェア

pagetop