秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「先ほどの門番とは交代したのかい?」
「これは、ベルンシュタイン様。ええ。顎をけりあげられ、頭を打っておりますので、しばらく詰め所で休んでいましたが、医者のもとへ行かせました」
「医者なら呼びつければいいじゃないか」
「王子殿下ならそうなりますが、我々ぐらいだと医者は来てくれません。ちょうど公爵様が馬車を使ってもいいと言ってくださりまして」
「へぇ。ああそれで、公爵様の馬車が見当たらないのか」
「ええ。早く回復するようにとありがたいお言葉までいただきました」
「そう。俺も早い回復を祈っているよ。ところでこの数時間の間に他に出入りした馬車はないね?」
「はい。大概のお客様はまだ事件が起きたことにも気づいておられません。そろそろ客室の明かりが多数つき始めましたので、お休みになられる方も多そうですが、薔薇園にもまだまだ人が溢れております」
「そうだね。恋する人間にとっては一晩など短い」
「ですね」
「君は恋人は?」
「いや、まあ。ベルンシュタイン様にお話しするようなものではないんですが……」
その後、照れながらも幼馴染の恋人の話をする騎士の話を一通り聞いてから、ギュンターは一度屋敷に仮面を取りに戻り、つけてから薔薇園の方に足を延ばした。