秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
そこでようやく、ギュンターは敬意を込めた態度を崩した。
足を組み、背もたれに体を預けてふっと息を吐きだす。
ギュンターとクラウスは一歳違いで、社交的であり国王からの覚えもめでたい父親のおかげで、幼少期からたびたび顔を合わせていた。
次男であるためか多少奔放に育ったクラウスは、子供のころから国王が息子だと言い憚りたくなるほど、自由でわがままだった。
彼に手を焼いていた国王は、見目麗しく賢い伯爵の子息に理想を見たのだ。ギュンターのことを特別目にかけ、ぜひ息子の友達になってほしいと、そしてその気品を分けてほしいといわれ、ふたりは年に何度も顔を合わせる間柄となった。
「で、話とはなんだい? クラウス」
「ようやく砕けてきたな。お前は他人に隙を見せなさすぎる」
「ベルンシュタイン家の長男ともなれば、やっかみだの、難癖つけられるだのいろいろあるからね」
「だろう。そして今をときめくギュンター=ベルンシュタインには縁談が殺到している。違うか?」
「いや、その通りだが。なぜお前が知っている?」
「簡単なことさ。この俺のところにも縁談というやつはやってくる。まったく面倒だよ」
「お前は嫁をもらって落ち着いたほうがいいだろう。今度爵位をいただくのだろう?」
「俺に爵位など、無用の長物だと父上はわからんのかね」
へろりと舌を出されても、ギュンターには国王の気持ちもわかる。