秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「これ……」
「仮面をつけた殿方が、こちらで休憩しておられるご令嬢へとお茶を注文されました。気分が休まる効果のあるお茶ですわ。ただいまお入れしますね。お待ちください」
「ありがとう」
コルネリアは、侍女の手元を見ながら、白薔薇に手を伸ばす。
きちんと棘がとられていて、長く握られていたのか花びらが少ししおれてきていた。
先ほど差し出してくれたものなのだろうか。
まさか本当に手元に届くなんて思わなかったので、うれしさで胸が詰まる。
「お水をいただけるかしら」
「え?」
「この花が一晩持つように」
「飾るのでしたら他の花も取ってまいりましょうか。一本だけではお寂しいでしょう」
「いいえ。これだけでいいの。一輪差しとお水をいただける?」
侍女は席をはずしすぐに言いつけられたものを持ってきた。コルネリアはそれに白薔薇を差し、月の光の当たる窓辺に飾った。
「綺麗」
暗闇を照らす灯りのようだ。見ていると、不安に思う気持ちが紛れていく。
ギュンター様ならば大丈夫。絶対エリーゼを見つけ出してくれる。
コルネリアは、窓辺でエリーゼが無事に見つかりますようにと、両手を組んで祈った。