秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
エリーゼを盾に取られて、騎士たちもギュンターたちも馬車からは一定の距離を取らざるを得ない。
そのうちに、御者は短剣をしまい、御者席に乗り込むと手綱を手に取った。
「道を開けろ!」
男の声があたりに響く。
前の道を塞いでいた騎士は、しぶしぶといった様子で動き出す。
このままでは、逃げられてしまう。
「せっかく戻ってきたのに。どうしよう。どうしたら」
エリーゼには意識がなさそうだ。
もしかしたら恐ろしすぎて気を失ったのかもしれない。
どれほどの不安だったか、考えたら胸がつぶれそうだ。これからまた攫われるなどあってはならない。
「私が身代わりになれれば……」
そんなことをしても意味はないことは分かっていた。
ただ、エリーゼが見知らぬ男にいいようにされるのだけは我慢がならない。
コルネリアは窓を閉め、部屋を出た。
当然見張りがいるものかと思ったが、そこに人の姿はなく、不審に思いながらも駆け出した。
廊下を抜け、角を曲がって階段に差し掛かろうとした瞬間、首の辺りに衝撃が走った。
急所を突いたそれは一撃で効果があった。
コルネリアは悲鳴を上げる間もなく、そのまま意識を失って床へと倒れた。