秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
7.最後の救出劇

 公爵令嬢・エリーゼを盾にとられ、ヴィリーをはじめとする騎士団の面々は動きを止めた。
御者台に戻った男は、にやりと笑う。


「ほら、道を空けろ!」


正面にいたヴィリーは顔をしかめ、しぶしぶ馬を移動させようとした。


そのとき、玄関から門へと走ってきたギュンターは声を張りあげた。


「大丈夫だ。ヴィリー、彼らを捕まえろ。彼らは絶対に令嬢には手を出さない」


薔薇園にいた招待客たちを中へ誘導していたクラウスは、驚いてギュンターを二度見した。
一瞬誰もが動きを止めたが、ヴィリーだけはすぐに馬の頭を馬車に向ける。

馬車の中で、エリーゼに短剣を突き付けた男が舌打ちをして、「早く馬を出せ」と叫んだ。

はじかれるように手綱を動かした御者の行く手を、騎士団の馬が塞ぐ。
ヴィリーは馬車の扉近くまで馬を寄せ、そこから中へと飛び込んだ。

狭い馬車内に突然飛び込んでこられて、エリーゼを捕らえていた男は慌ててヴィリーを押し返そうと短剣を振るう。

それはヴィリーの頬を傷つけたが、代わりに腕を捉えることに成功した。
手から短剣を奪い取るとともに、空いた手で彼の顎にこぶしをぶつける。衝撃で手が緩んだ瞬間を狙って、エリーゼをひきはがした。

自分の腕に抱きしめ、痛みにうめく男を足で馬車から落とす。


しかし、馬のいななきが聞こえたかと思うと途端に馬車が揺れはじめ、ヴィリーもバランスを崩して座り込む。
自棄になった御者が馬を騎士団の馬たちに突進させ、そのまま走り出したのだ。

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