秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「あれは、ギュンター殿が指揮を執ると言ったからこそっ」
「しかし約束は約束です。証人はクラウス王子殿下だ。なあ、そうだろう?」
ギュンターが目で訴えると、クラウスは楽しそうに笑った。
「ああ聞きましたとも。叔父様、ヴィリーはあれでなかなか将来有望ですよ。男爵家の三男ですから爵位を継ぐことはありませんが、立派に騎士として名を上げるでしょう。爵位の有無をお望みなら、彼の働きに期待すればいい。必ずや何かしらの功績を残すことでしょう。叔父様が後ろ盾となるなら、それはたやすいはずだ」
「しかし、エリーゼはギュンター殿に」
「申し訳ありません、公爵様。エリーゼ様は確かにお美しく清らかで素晴らしい女性です。だからこそこの笑顔を摘み取るような真似はしたくないのですよ。それに……私も心に決めた人がおります。別の誰かを想う男といるより、自分を思ってくれる男と暮らすほうが、エリーゼ様も幸せだと思いますよ」
「そんな……」
へなへなと力を無くし、座り込んでしまいそうだった公爵は、はっと思い立ったように顔を上げた。
「そういえば、あなた方が外にいる間に、私は、コルネリアの策略の証拠を掴みましたぞ。やはり犯人はあの娘で間違いない。エリーゼ、お前ももう、金輪際コルネリアとは関わるな」
「は?」
「なんですって?」
ギュンターとエリーゼが同時に眉根を寄せる。
「どういう理屈でコルネリア嬢が犯人になったのです。彼女はずっと一室に閉じ込めておいたはずですが」
「先ほど逃げ出そうとしたところを捕まえたのだ。ほら、男たちへの指示書も見つけた。犯人はコルネリアだ」
公爵の手にあるのは走り書きのようなメモだ。
女性らしい筆跡には見えるが、これだけでコルネリアが書いたものとは断定できない。