秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「……本人が吐いたんですか?」
眉根を寄せたまま、低く、抑えたような声でギュンターが問いかける。
「まだごまかそうとしているが、なあに、いずれ証拠は挙がってくるはずだ。この罪は重い。さっそく国王に……」
「お待ちください、公爵」
ギュンターの声から柔らかさが抜ける。冷徹な声、鋭い視線は、周りの温度さえも下げてしまったようで、隣にいたクラウスは身震いする。
「エリーゼ嬢の捜索は私に一任してくださるとおっしゃいましたよね。どうして勝手な行動をなさいました」
突然怒りをあらわにしたギュンターに、公爵は息をのむ。
「ギュ、ギュンター殿?」
「コルネリア嬢はどこです?」
「ちゃんと捕まえてある。私の手のものに尋問をさせているところだ」
機嫌を取るようにギュンターの腕に触れようとした公爵の手は、チッという舌打ちとともに振り払われた。
そんな不敬な扱いを受けたことのない公爵は、目を点にしてギュンターを見つめる。
「コルネリア嬢の取り調べは私がやります。内密に事を収めるつもりでしたが、事情が変わりました。私には犯人が分かっています。お立場もあるでしょう。部屋で話したほうがいいと思います」
「おい、ギュンター」
「クラウス。今回の首謀者はバルテル公爵だ。俺はコルネリアを探しに行く。全員を一室に集め、逃がすなよ」
「おいっ、ギュンター」
クラウスにあとを任せ、ギュンターは駆け出した。