空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
昴が事故で亡くなったという報せを聞いた時、僕は普段と同じように家にいた。


最初は、何かの冗談かと思った。


警察官だという大人からかかってきた一本の電話。


着信履歴の一番上にあったのが僕だということでそうしたらしかったけれど、その時僕はその説明をほとんど聞こえていなかった。


それどころじゃなかった。


昴が死んだ……?


大晴山で、崖から足を滑らせて……?


そんなことが現実だと、信じられるはずもなかった。


だけど話を聞くにつれて、それは冗談でも何でもなく、現実のことだと分からされた。


電話を終えて、僕は震えて手でスマホを操作した。


彼女もまた、昴の死を現実のことだと受け止められていないみたいだった。


『うそ、だよ……』


受話口の向こうで、彼女はそうつぶやいた。


『……だって、昨日、いっしょにいたんだよ……? 私の話を聞いてくれて、来週、いっしょに行きたい場所があるって、約束して……』


「……嘘じゃないんだ、仁科。僕だって……信じたく、ない。でも……」


僕の言葉は最後まで続けられなかった。


通話はすぐに切られてしまい、あとには静寂だけが空しく残った。


彼女がどこに向かったのかは、想像がついた。


彼女はきっとあそこへ向かったのだ。




星の輝く場所へ。




 昴との思い出が溢れた、屋上へ……


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