空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
防水バッグにスマホとタオルを突っ込んで、最後に彼女を見たという方向へと泳いでいく。


だけど当然そこにはもう彼女の姿はない。


どこだ……!


少し前から、雨が降り始めていた。


夏とはいえその雨粒は冷たく、水着のままじゃ大してかからずに体温が奪われてしまうだろう。


早く見付けださないと……


焦りを覚え始めた、その時だった。



(――こっちだ!)



「……!」


声が聞こえたような気がした。


それは懐かしくて、耳慣れた声。



(こっちだ、涼! 梨沙はこっちにいる!)



それが幻聴の類だったのか、それとも本当に昴の幽霊の声だったのか、分からない。


だけど僕はそれを信じた。


声のする方向へと泳ぎ出す。


だって幻聴にせよこの世のものではない何かにせよ……それは僕が最も信頼する相手の声だったから。




そしてその声に導かれていった先に……仁科はいた。


< 157 / 203 >

この作品をシェア

pagetop