空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
「……仁科! 大丈夫か、仁科……!」


雨に濡れて冷たくなった身体を揺り動かす。


やがて彼女は、ゆっくりと目を開いた。


「昴……」


「……っ」


その名前が出てくることなんて、想像できていたはずだ。


意識がもうろうとした彼女が、一番に発するのは最も信頼している、想いを向けている相手のはずだ。


だけどその言葉に、思っていたよりもずっと、僕は動揺していた。


声を絞り出す。


「……悪い、昴じゃ、ない」


「え……」


「……仁科が戻ってこないから、探しに来たんだ。たぶん、こっちに流されたんじゃないかって」


「あ……」


「……大丈夫。すぐに助けが来るから」


そう言って、バッグからタオルを出して彼女の肩にかける。


そして、僕はこう口にした。


「……何でかな。何だか、昴がこっちだって教えてくれているような気がしたんだ」


「……」


「……変、だよな。昴はもういないってのに」


「そんなこと」


彼女が首を振る。


彼女にとっては、たとえ幽霊でも昴は傍にいてほしい存在。


そういうことなんだろう。


「……寒い?」


尋ねると彼女は身体をブルリと震わせた。


「え、あ、うん、少し……」


「……そっか。じゃあ」


「……え?」


自分でも、どうしてそうしたのか分からない。



だけど僕は、彼女のことを、きつく後ろから抱きしめていた。


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