空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
それは起こってしまった。
ある日涼くんと二人で梨沙の家にやって来た時に……ベッドの上で倒れる梨沙を発見してしまったのだ。
その周りに散らばっている錠剤を見て、ひと目でそれがただごとじゃないって分かった。
「……藤井、救急車を!」
「え、あ……」
「……早く!」
「あ、う、うん!」
眠るように倒れこんでいる梨沙。
震える手で119をプッシュして、救急車を呼ぶ。
救急車はすぐに向かってくれるという。
だけどその時間が、まるで引き伸ばしたみたいに長く感じられた。
「……どうして、こんなことを……」
感情を押し殺した声でそう言う涼くんに、梨沙が小さく口にする。
「約束したのに……絶対に会いにきてくれるって言ったのに……。みんな、約束を守ってくれない……お祖母ちゃんもそうだった……。だったら……もう待たない……私も、昴のところに行く……」
ああ、と思った。
梨沙のお祖母ちゃんの話。
お祖母ちゃんが亡くなった時、梨沙はやっぱりひどく落ち込んだ。
来る日も来る日も泣いてばっかりで、見ていられなかった。
間近で見ていて、力になれない自分がもどかしく感じられたものだった。
梨沙にとって、これで二度目なのだ。
大切な人を、亡くすのは。
その時だった。
パン……!
「!」
乾いた音が、部屋の中に鳴り響いた。
涼くんが、梨沙の頬を叩いていた。
「……涼、く……ん……?」
梨沙が目を瞬かせる。
「……仁科は、馬鹿だ……」
「え……?」
「……死んであいつのところに行くなんて……昴が、そんなこと望んでると本当に思ってる……!」
「でも、だって……」
「……だって、じゃない。誓って言ってもいい。僕は昴と子どものからいっしょにいた。だれよりもあいつの気持ちを分かってる。その上で……今の仁科の姿を見たら、あいつは間違いなく怒る。「何やってんだこの馬鹿!」って、本気で怒るに決まってる」
今まで聞いたことがないくらい、感情のこもった口調でそう声を張り上げる。
その時、ふと思ってしまった。
涼くんの好きな人って、もしかしたら梨沙なんじゃないかって。
本当のところは分からない。
でも涼くんのその言葉は、梨沙の心に届いたみたいだった。
梨沙は、泣いていた。
声を上げて、泣き崩れていた。
それを見て……あたしは、少しだけほっとした。
昴くんが亡くなってから、梨沙が泣くのを見るのはこれが初めてだった。
親戚の看護師をやってるお姉ちゃんに聞いたことがある。
何かに傷ついている人にとって、一番しんどいのは、泣けないことだって。
泣くことができれば、それは前に進もうとしている第一歩なんだって。
ある日涼くんと二人で梨沙の家にやって来た時に……ベッドの上で倒れる梨沙を発見してしまったのだ。
その周りに散らばっている錠剤を見て、ひと目でそれがただごとじゃないって分かった。
「……藤井、救急車を!」
「え、あ……」
「……早く!」
「あ、う、うん!」
眠るように倒れこんでいる梨沙。
震える手で119をプッシュして、救急車を呼ぶ。
救急車はすぐに向かってくれるという。
だけどその時間が、まるで引き伸ばしたみたいに長く感じられた。
「……どうして、こんなことを……」
感情を押し殺した声でそう言う涼くんに、梨沙が小さく口にする。
「約束したのに……絶対に会いにきてくれるって言ったのに……。みんな、約束を守ってくれない……お祖母ちゃんもそうだった……。だったら……もう待たない……私も、昴のところに行く……」
ああ、と思った。
梨沙のお祖母ちゃんの話。
お祖母ちゃんが亡くなった時、梨沙はやっぱりひどく落ち込んだ。
来る日も来る日も泣いてばっかりで、見ていられなかった。
間近で見ていて、力になれない自分がもどかしく感じられたものだった。
梨沙にとって、これで二度目なのだ。
大切な人を、亡くすのは。
その時だった。
パン……!
「!」
乾いた音が、部屋の中に鳴り響いた。
涼くんが、梨沙の頬を叩いていた。
「……涼、く……ん……?」
梨沙が目を瞬かせる。
「……仁科は、馬鹿だ……」
「え……?」
「……死んであいつのところに行くなんて……昴が、そんなこと望んでると本当に思ってる……!」
「でも、だって……」
「……だって、じゃない。誓って言ってもいい。僕は昴と子どものからいっしょにいた。だれよりもあいつの気持ちを分かってる。その上で……今の仁科の姿を見たら、あいつは間違いなく怒る。「何やってんだこの馬鹿!」って、本気で怒るに決まってる」
今まで聞いたことがないくらい、感情のこもった口調でそう声を張り上げる。
その時、ふと思ってしまった。
涼くんの好きな人って、もしかしたら梨沙なんじゃないかって。
本当のところは分からない。
でも涼くんのその言葉は、梨沙の心に届いたみたいだった。
梨沙は、泣いていた。
声を上げて、泣き崩れていた。
それを見て……あたしは、少しだけほっとした。
昴くんが亡くなってから、梨沙が泣くのを見るのはこれが初めてだった。
親戚の看護師をやってるお姉ちゃんに聞いたことがある。
何かに傷ついている人にとって、一番しんどいのは、泣けないことだって。
泣くことができれば、それは前に進もうとしている第一歩なんだって。