空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
登山道から山道へと変わっていく足もとを踏みしめながら進んでいき、やがて目的の場所に辿り着く。


〝星見台〟の中心部分。


そこは噂に違わず美しい星を見ることができる場所だったけど、本番は梨沙といっしょに来る明日だ。


星の観察はそこそこに、そこにある、ひときわ大きな木の根元に、それを埋める。


「……よし」


明後日になったら、梨沙といっしょにここに来てこれを掘り返そう。


掘り返して、二人でそれを見て、そして自分の気持ちを告げよう。


そう決意して、〝星見台〟を離れた。


たぶん、気の緩みがあったんだと思う。


下見をすませたのと仕込みがうまくできたのとで安心して、油断してたんだろうな。


帰り道にあった、暗闇の中に張り出した枝。


それに当たりそうになってしまった。


「……っ!」


枝自体は、すんでのところでよけることができた。


だけどその拍子に、枝にチョーカーが引っかかって飛んでしまった。


梨沙にもらった……大切な、チョーカー。


「……!」


宙を舞うチョーカーをつかもうと手を伸ばす。


その先にあったのは、急な斜面。


しまった、と思った時には、もう身体が宙に浮いていた。


空と地面とが逆さまになる感覚。


そのままあっけなく、俺は崖から転げ落ちた。


痛みとかは感じなかった。


ただ身体中が冷たくなってきて、意識がぼんやりとしてきて、ああ、俺、死ぬんだな……っていうことだけは漠然と理解できた。


梨沙……


最期に頭に浮かんだのは、柔らかく笑う梨沙の顔だった。


梨沙、泣くかな……


何とかつかむことができたチョーカーを手に、そんなことを思う。


薄れていく視界の先には、シルエットのような黒い木々の隙間から、ぽっかりと空が見えた。



そこには、蒼く光る六つの星が光り輝いていた。



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