空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
「……ねえ、そんなところで何してるの?」


おそるおそる声をかける。


「! だれだ!」


「え? あ、わ、私、三年一組の仁科っていって、その、あやしい者じゃ」


「何だ、見回りの先生じゃないのか」


男子は驚いたように私の方を見ていたけど、すぐに首を振りながらこう返してきた。


「星を見てるんだ」


「星?」


「ああ、ここが、学校では一番よく見えるんだ」


そう言うと、暗くなってほとんど何も見えない屋上で、男子は手招きをした。


「あ、そこ、段差になってるから気を付けろよ」


「え? ――あっ」


言われた先からつまずいて転んでしまった。


うう、かっこわるい……


「大丈夫か?」


「う、うん」


小さく答えながら、男子に近づく。


「星って、何が見えるの?」


「何だって見える。今の時期なら、夏の大三角、さそり座のアンタレス、天の川、それに何と言ってもあれだろ。ほら、これ見てみろよ」


「いいの?」


「ああ」


うながされて、昴の手元にあった天体望遠鏡を覗きこむ。


すると、たくさんある星の中でもひときわきれいな蒼色に輝く六つの星が飛びこんできた。


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