空に星が輝く限り、私はきみを忘れない~Dearest~
「今日は、何の星を見てたの?」


「デネブとアルタイルとベガ。夏の大三角だな。見てみるか?」


「うん」


望遠鏡を覗きこむ。


そこには、空を切り取るように光る大きな三角形があった。


「すごい、ほんとに三角形なんだね」


「分かりやすいだろ? はくちょう座、わし座、こと座。初心者にはまずこれを見せると興味を持ってくれるんだ」


「うん、それ分かる気がする」


「だろ?」


「他にもそういう、初心者向けの星ってあるの?」


「ん、そうだな。さそり座のアンタレスとか……」


夏の大三角。


さそり座。


いて座、ヘルクレス座、南斗六星。


そしてまた、プレアデス星団。


ひとしきり、きらめくような夏の星々を堪能して、私は視線を地上に戻した。



「そういえば、朝、すごかったね」


「ん、ああ。涼のやつがバスケをやりたいっていうからさ」


「二人とも、選手みたいだった。ダンクシュートとかしてて」


かっこよかった。


夜空の星みたいにキラキラとしていて、まぶしかった。


「んなことないって。すごいのは涼で、俺は適当にやってただけから」


「そんなことないよ! 一ノ瀬くんもすごかった!」


バスケをする一ノ瀬くんも、こうやって屋上で星を説明してくれる一ノ瀬くんも、どっちもすごいと思う。


「そっか、サンキュな」


そう言って、一ノ瀬くんは笑った。


子どもみたいな笑顔だった。


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