犬飼くんが見てる







翌日、いつも通りに登校すると。


「………あれ?」


いつもあたしより先に来ている犬飼くんの席が、空いたまま。

珍しいこともあるもんだと思っていると、とうとう朝礼のチャイムが鳴り、担任の先生が入って来た。


「あれ? 犬飼いないのか。何も連絡きてないんだけどな……誰か何か聞いてないか?」


誰も答えない。


そういえば、犬飼くんの連絡先知ってる子とか、聞いたことないな。

寝坊とかかな………ほんと珍しいな。


でも、いつまで経っても、犬飼くんは姿を見せなかった。


いつの間にか、もう4時間目。

この授業が終わったらお昼だ。


犬飼くんはこのまま学校に来ないのだろうか?


いつもあたしの前にある、学ランの猫背がないだけで、やけに教室が広く感じるから不思議だ。


それに、休み時間も、振り返って話しかけてくる人がいない。

だからか、妙に時間が経つのが長い気がした。


なんだろう、この感じは。

なんて言えばいいのか………。

ぽっかり穴が空いたみたいな。


あたしはぼんやりと頬杖をつき、数学の先生の話をBGMにして、窓の外を眺めていた。


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