命短き、花初恋。
夜になった。
「…星が綺麗でしょ。ここ。」
そう言われて僕は、窓の方へ行く。
「うん。海も綺麗だけど、星もいいね。」
「そうなの。いいところだよ。」
「うん。」
「本当は、海をもっと近くで見たいんだけど
ね。」
「そうだね。」
「ねぇ。」
「なに?」
「来世って、信じる?」
びっくりした。
いきなりな話だったから。
でも。
「…ありえると思う。」
「じゃあ、もし。生まれ変わったとしても、
舞音くんはまた、私を見つけ出して、愛し
てくれる?」
「もちろん。どこにいても探し出して、愛し
てるって、抱きしめるよ。」
「あはは。それはちょっと怖いけど。ありが
とう。」
「うん。あ、じゃあさ、明日は車椅子で海ま
で行ってみる?なーんて…」
返事はなかった。
桜の方を振り返る。
目を瞑っていた。
「桜…?」
息をしていなかった。
僕は桜を抱き締める。
「桜っ!!逝かないでよ!まだ、話したい
事…あるんだ…」
途端に涙が溢れる。
胸がはち切れそうだ。
「桜…!」
何回も名前を呼んだ。
でも、
その大きくて、澄んだ瞳を開けることは無
かった。
その安らかな顔は
いつか僕の部屋で眠ってしまった
眠り姫のようだった。
「桜…愛してる…」