私はね、人間の怨み、妬み、憎しみ、悲しみを閉じ込めた巻き物だ。

私を使っていた人間はね、湧き上がった感情を…私に書き留めていた。
辛い記憶を閉じ込める様に、感情の捌け口にしてたんだ。
でもね、読み返す事が嫌になったんだろう…
書いた事自体が、なかった事なればいいのにと願ったんだ。

そして、私は自分の中に、その人間の感情を溜め込む事にしたんだ。
願いを叶えるために…
書いても、次の日には消えている様になってから、その人間はより多くの感情を私にぶつけて来たんだ。
私はどんどん溜め込んだんだ。
私はその人間が死ぬまで、書き込まれ続けたんだ。

その人間が死んでから…私は溜め込み続けた感情を持て余す様になってしまった。
自身で移動する事も、人間の言葉を話す事も、姿を変える事も、人間を呪う事さえ、出来る様になってしまった。

そして、溜め込んだ感情が暴走して私は…とある人間を呪ってしまったんだ。

私は…消えたかったんだ…
本来なら、あの人間が死んだ時に私も消えるはずだった…

その望みを叶える為に、ヨルさんに依頼したんだ。
ヨルさんと、私を使っていた人間は親しかったからね。
そのツテで頼んだんだ。
< 12 / 17 >

この作品をシェア

pagetop