ツキ「えっと、まずですね…」

ツキはお茶を入れながら説明していく。

ツキ「ここは僕たちの家兼、言葉屋と言う店なんです。さっきの失礼なのが、ヨル。僕はツキと言います。」

女「はぁ…」

女は首を傾げながら返事をする。

ツキ「言葉屋がどんな店かと言いますと…あそこにある巻き物が見えますね?」

床の間を刺し、立てかけてある巻き物を指差す。

ツキ「あの巻き物から言葉を引き出して、お客様に差し上げるんです。そうすれば言葉通りになります。」

女「言葉通りになる?」

ツキ「例えばお金持ちになりたいとしますよね?そうしたら、金持ちという言葉を引き出します。そして、お客様が受け取れば、その言葉通りになります。」

女「えっ!?」

ツキ「これが言葉屋と言うものです。人間の言葉の力で、望みを叶えると言う場所なんです。」

女「…かなりインチキ臭いんですが…」

ツキ「まぁそこは…否めませんが、外の景色を見ていただければ、ここがあなたにとって普通の場所にない事は、理解していただけるかと…」

ツキは苦い顔しながら、女にお茶を差し出す。

ツキ「熱いので気をつけて下さいね。」

女「ありがとう…」

ツキ「説明に戻りますと…ここはいろんな場所に繋がってるのですよ。この場所に来るにはかなりの強運が無いと来れないんです。でないと、二度と元いた場所にはと戻れなくなっちゃいますから。」

ブー!!!
女が飲んでいたお茶を噴き出す。
ツキは慌ててふきんを差し出した。

ツキ「落ち着いて下さい。辿り着けたんですから、帰れ…」

ヨル「帰れる。」

今まで黙っていたヨルがすかさず言った。

ヨル「だが、帰るにはお前が言葉を選ばないといけない。」

女「えっと言葉を選ぶ…つまり、その辞書から言葉を受け取るって…事?」

女は半信半疑ではあるが、一応話は聞いていたようだ。

ヨル「その通り。で?どんな言葉だ?」

女「え…あの…急に言われても…信じられないって言うか…わからないと言うか…」

ヨル「チッ…仕方ないな…」

そうしてヨルは、床の間の巻き物を手に取った。
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