兎は寂しくても死なない
行為が終わった後、汗と体液でベタベタした身体をシャワーで洗い流した。
木宮真緒の引き締まった身体が風呂場の明るい光に照らされ少しだけ目を逸らす。そんな私に気づいたのか木宮は少しだけニヤついた顔で私に「へんたい」だなんて言い放つもんだから、「は?まーくんに言われたくない」なんて言い返しながらも、私は柄にもなくこの居心地の良い時間が終わらなければいいのに、なんて願った。
〜〜
お風呂から出ると先に出た木宮真緒が携帯を弄っていた。「わりぃ、これだけ返しちゃうわ」なんて携帯の画面から目を逸らす事なく言う彼に「どーぞごゆっくり〜」なんて心底どうでもいい様な口ぶりで返した。
きっと先程、携帯を鳴らしていた人物にでも返事を返しているんだろう。
そういえば初めて木宮真緒と関係を持った時も携帯がうるさく鳴っていたっけ。
「好きな女の子〜?」
「ちげーよ、友達」
「ふ〜ん」
「なに?」
「まーくんってさ、他の女ともやったりしてんの?」
「さすがにしてねーよ」
本当?なんて一瞬口に出そうか迷ったが止めた。私にはそこまで言う権利は無い。だけど他の女の子とも関係を持っていたら、なんて考えると何とも言えない不快感が私を襲った。あー、やばい、余計な事言っちゃいそう。
「類とこーゆう関係の間は、他の女の子とえっちしないで欲しいんだけど」
「なにそれ束縛?」
「違うよ、他の子とやったその汚い手で気安く触らないでっていうお願い」
「はいはい、わかりましたよ」
さながら妹をあやす兄のような笑みを浮かべて私の頭を撫でる木宮真緒が少しだけ好きだと思った。
「他の子とやったら、まーくんじゃない人さがすから、嘘つかないでちゃんと言ってよね」
「うん、わかったよ」
強がりと一緒にこんな酷い言葉が出てくる自分に、反吐がでそうだ。