兎は寂しくても死なない
「わー、まーくんってお金持ちだったんだねぇ」大きな家を目の前に率直な感想を述べれば木宮真緒は普通だよなんて困った顔をした。結局まーくんの家の場所すら知らなかった無計画すぎる計画は、木宮真緒からの連絡によって如何にか成り立ち、借りて来たDVDが入ったバッグとお土産に買って来たデザートを持ち木宮真緒の後に続いて家の中に入る所にまで至った。玄関でお邪魔しますと小さく言えば、親はいないからなんて漫画で見たような台詞を言うので少し恥ずかしくなってデザートの箱をまーくんに押し付けた。
「まーくん最初何見る?ホラー?アクション?」
「アクション」
「はーい」
まーくんの部屋は大きすぎず小さすぎずで少し散らかっていて、男の子の部屋だと思った。小さなテーブルに置いてある灰皿はいっぱいで少し煙草の匂いが鼻をかすめた。私は決して真面目ではないから男の子の部屋に入ったくらいで緊張したりはしないのだが、人は選ぶのでそこまで経験が豊富というわけでもない。だがそれにしても今日はなんだか少し落ち着かなかった。そーいえば、どうして私は木宮真緒に声をかけたんだろう。