兎は寂しくても死なない




どれくらい経っただろうか。見ているアクションものはもう終盤を迎えているそんな時だった。木宮真緒の腕が後ろから私を抱きしめた。「まーくん?どうしたの?」なんて態とらしく聞く私も相当だが木宮真緒の熱っぽい瞳を見て、こいつもなかなかだなぁなんて思ってしまった。私は男の家に行くことがどういった意味を持つのか理解していたつもりだったけれど何処かで期待していたのかもしれない。木宮真緒は私を友人として大事にしてくれるんではないかと。友人として必要だと言ってくれるんではないかと。こんなことしちゃいけないよって言ってくれるんではないかと。都合の良い欲しかった言葉が宙に浮かんでは溶けて、涙が出そうになった。
不自然に窓際に飾られたマグカップやずっと鳴り止まない携帯電話が彼に好きな女がいると叫んでいるような気がした。
代わりがいる存在なんてどこまで寂しいんだろう。好きな女がいるのに他の女を抱くのはどんな気分なんだろう。私は何がしたかったんだろう。満たされていく身体とは裏腹に心が冷え切っていくのを感じた。



〜〜〜〜〜〜



木宮真緒は明るくて男女問わず友達が多い。身長は小さいが男らしいと女の子から人気でいつも周りには女の子がいる。
私が知っていた木宮の情報はそれくらいで、要はただの顔見知りだった。
そんな私が木宮真緒に興味を持ったのは少し前の事で。彼には好きな女の子がいることを噂で聞いた。詳しいことは木宮は絶対に話さないらしいし好きとも言わないようだ。だけどその子へ向ける優しさが他とは別物らしく一目でわかるなんて誰かが言っていた。私はその日から彼に興味を持ち出すことになる。



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