兎は寂しくても死なない




うーん、これはつまりそうゆう事なんだろう。しかし私が誘うよりも前に彼が誘ってくるのは意外だった。こいつ、やっぱり好きな女と上手くいってないのか?なんて思って少しだけ彼を睨みつけた。自分から木宮真緒とこの関係を築いたくせに都合が良い代用品を見つけたと木宮に思われているのが気に入らないと思った自分がいた。なんて我儘な生き物なんだ私は。別に木宮に好きになって欲しいだなんて思ってもいないくせに。

「いいよ、でもどこで?」
「あー俺ん家は今日無理でさ、類の家は?」
「男は泊まれないんだよねぇ。」
「えーじゃあどこ?」
「白々しいなぁ、まーくん。どっちの家もだめならヤるところなんて決まってるでしょ」

女らしい声色で話してみる。色気なんてあるかはわからないけど木宮の少し赤い顔を見たなら、自分の中では中々上出来だったんではないかなんて思ってしまった。笑いが溢れてしまいそうだ。

嘘だらけの、自分に。






〜〜〜〜〜〜






夜、迎えの自転車がきて木宮の後ろに乗せてもらい走り出した。わぁ、なんか青春っぽい。二人乗りする自転車や、少しだけ香る夏の匂い。暑さと共に薄くなってきた洋服。その洋服に回す私の腕。だがそんな事を思うのもつかの間ピンクのネオンが光るホテルの入り口に辿り着けば、彼は自転車を素早く停めて私もそれに合わせるかの様に思考を止めた。
「俺ホテル初めて」なんて少し緊張気味の木宮を見て少しだけ頬が緩む。彼の初めてを一つ頂くことに少しだけ嬉しいと感じたのは私が本当に寂しい人間だからだろう。



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