この空の彼方にいるきみへ、永遠の恋を捧ぐ。



「美羽……」


急に黙り込んだ私を、心配そうに見つめる棗くん。


いけない、棗くんが気にしちゃう。

もっとしっかりしないと……。


「棗くん、どこか行きたい所ってない?」

「行きたい所……うーん、美羽がいるならどこでもいいんだけどな。じゃあ、図書館で勉強でもする?」

「ええっ!」


こんな時に勉強って……。

そう思ってすぐに考え直す。

棗くんが病気じゃなかったら、これが普通の生活だよね。

もしかして、棗くんは最期まで普通に生活することを望んでるのかもしれない。

だとしたら……。


「私、数学が苦手なんです。棗くん、教えてくれる?」

「うん、美羽のためなら喜んで」

「うん、ありがとう……」


棗くんとの終わりより、今の時間を大切にしなきゃ。


そう自分に言い聞かせた私は、この手の温もりがずっと消えませんようにと、繋いだ手に力を込めた。


< 170 / 223 >

この作品をシェア

pagetop