Love Birthday‥~約束~



「あいつら、病棟に行く用事を見つけては遠回りしてこの病室の前を素通りしてるんだよ。
ほら、そろそろ前川が通る頃だ……」



緒方科長が開けっ放しにした入口に目を向けると、少しの間の後に前川先生が現れた。


「うあ!!」


俺と目が合った前川先生は、変な声を出して慌てて歩いてきた廊下を引き返した。



「次……たぶん横山と安井……」


数分後、緒方科長が言ったとおり横山先生と安井先生が病室の前を素通りしていく。




驚いた。

次から次へと理学療法士の先生たちが目の前を通り過ぎて行く。


先生たちにとって貴重な短い昼休みなのに……。



「どう……して……」


「みんな吉田のことを心配してるんだよ。
吉田の力になりたいって脊髄損傷の勉強をしなおしてる」




気がつくと、俺の頬には涙が伝っていた。




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