Love Birthday‥~約束~
≪5≫―吉田志則―
勇気
夏の猛暑が落ち着き始めたある朝、
緒方科長が珍しく早くにリハビリ室に来た。
「吉田、足の調子はどうだ?」
「まだ松葉杖なしでは立てないけど、足に少しずつ感覚が戻ってきているような気がします」
正確には感覚なんて戻ってない。
だけど、足が立ち上がろうとするんだ。
緒方科長が真剣な眼差しで俺の足を触る。
どうして緒方科長はここまで俺を気遣ってくれるんだろう。
毎日『どうだ?』って俺の足に触れ、自分の仕事を残業にしてもリハビリに付き合ってくれる。
俺が仕事をしてる時、少しでも無理をすると必ず声をかけてくれるんだ。
それは俺のためじゃなく患者さんのためなのかもしれないけど……。
けど、緒方科長の優しさがひしひしと伝わってくるんだ。