Love Birthday‥~約束~
「今日、仕事が終わったらこの前言った喫茶店で待ってて。
準備が出来たら迎えに行くから」
クリスマスの朝、病院の玄関で中嶋先生に会った時に笑顔で言われた。
俺はこの笑顔を壊したくない。
昨日買った小さな十字架のシルバーネックレスをポケットの中で握り締め、俺は微笑み返した。
昼休みになっても、今朝の中嶋先生の笑顔が俺の頭から離れない。
今、目の前にいる中嶋先生は学会の準備で頭を抱えてるのに。
俺は頭の中をクリアにしたくて、普段滅多に行かない売店に足を向けた。
廊下に背を向けて売店の棚に置かれた本を見ていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。
「吉田先生!」
驚いてふり返ると、そこには陸君が車いすに座っていた。
陸君の瞳と視線が重なり、ドキッと胸が高鳴った。
それでも俺は平然を装って、上着を着てる陸君に声をかけた。
「あれ、どこかに行くの?」
「うん。学校に行ってくる。
今日クラスのみんながクリスマス会と一緒に僕のお別れ会もしてくれるんだ」
嬉しそうに話す陸君。
無邪気なその笑顔に、
俺は嘘をついてるんだ……。
そして、このまま陸君と別れることを
俺は喜んだんだ……。