Love Birthday‥~約束~


「吉田君? 吉田君だよね?」

トイレから出てきた男性が、歩み寄りながら俺を呼ぶ。


俺は目を細めてその人の顔を見た。


河相さん……?

やっぱり河相さんだ――。


「河相さん、お久しぶりです!」


松葉杖を立てて立ち上がり、河相さんに向かって頭を下げた。


河相さんとは実習最終日に会って以来だから、1年ぶりの再会だった。



「吉田君、もしかしてここの病院で理学療法士をしてるの?」

「はい」


白衣姿の俺を見て、河相さんは嬉しそうに言った。

そして、松葉杖を握っている俺に驚いていた。


「その足どうしたの?」



そうか、河相さんが退院したのは俺が階段から落ちた日の翌朝だったから

河相さんは何も知らないんだ。


「ちょっと人並より大きな怪我をしちゃったんです」


苦笑いで言った俺に、河相さんは顔をしかめて微笑んだ。



河相さんは、もうすっかり骨折した足が完治して、しっかりとした足取りで歩いていた。

俺はそのことが嬉しかった。





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